2012年10月7日日曜日

まぶしい いたずらな祈り~不失者 2DAYS @難波 ベアーズ 9月20日


それしか出来ないから、それだけやっているのと、出来るけどやらないのとは、ずいぶん違う。

灰野敬二の場合、ノイズとはいえ、電気ギターをちょっと触って、あとは延々と音を伸ばしながら加工するというようなやり方はしない。一音一音、全身全霊で弾きまくる。身体が大きく痙攣して、まさに音と格闘し、ねじ伏せた音を自分の中で飼い慣らしてから、吐き出している感じがする。

恐らく日本では、ギターの可能性と言うのは、未だにこの人が広げているのだろうなぁ ということもよく分かる。それくらい、奏法として極北を行っているのだ。



『ドキュメント 灰野敬二』 公式サイト


ちゃんとしたリズムを伴った曲、作曲された曲、ロックみたいな曲、全部、あたかも予定されていたかのようにスムーズに演奏が続く。何を言ってるのか、よく分からない絶叫型のヴォイスも乗る。

灰野さんは、“Cの5!” とか号令をかけて、コンダクターのように手で、演奏を始めたり止めたりの合図を送る。
それにしても、灰野さんはもう還暦のはずだが、本当に凄いエネルギーで、7:45 pm くらいから始めて、ぜんぜん休みなしで 10:10 pm くらいまで、ねじ伏せた音でタペストリーを紡ぎ続け、ベアーズに透明で巨大な音の壁を垂らした。

この音響の暴風雨の中では聴いているだけで、披露困憊になり、アンコールを要求する気にはとてもなれず、終演後もしばらくは、呆然と立ち尽くしていた。実際、体中痛かったのだが、灰野さんはあんな力演で大丈夫なのだろうか と心配になった。
だから、言わばオートマティックに、お約束のようにアンコールの手拍子を打つ客には、少しイラっとした。あんな凄まじい演奏の後で、アンコールが要求出来る聴衆の無神経さに腹が立ったのだ。この内容でアンコールって、そもそも、おかしいだろ と。

灰野さんのライヴは4回目だが、以前はとにかくダイナミックレンジの幅が半端なくて、“耳死ぬ”(この感覚は、不失者以外では感じたことがない) というくらいの大音量だったが、今回はそれほどではなかった。
それにしてもツーデイズの二日目で、そこそこ人が入ってると言うのは、意外(失礼!)で驚いた。

映画 『ドキュメント 灰野敬二』 も公開されるし、新譜も出たところ(今年は、なんと半年スパンで二枚目)だし、今、フォローの風が来てるのだろうか。


当分、この悪夢からは覚めそうにない。




不失者 『光となづけよう』

1. まだ光となずけられない者
2. 俺の分け前
3. 「知れる」ということ
4. あれだけは
5. 中心の決意I
6. とどめ  やり方
7. 中心の決意II




不失者 『まぶしい いたずらな祈り』

1. まぶしい いたずらな祈り
2. とぎすまされるのは・・・
3. さしだされたまま
4. ここのありか
5. いみくずし
6. ぼくになっている












大変なことにいわし亭部長が参加したライヴがゆうつべにアップされている。こんなことがあっていいのか! 消される前に、大急ぎで視聴を!








2 件のコメント:

  1. 灰野敬二さんのドキュメント見ました。そして今日2回目を見に行く予定です。灰野さんのことはそれまで存じ上げなかったのですが灰野さんを知って「こういう方がいらっしゃるんだ」と、なんだか魂が浄化されるような思いで幸せにありました。「一音」へのこだわり、それは究極の美意識とも言えるかもしれない。自分の道をひたすらまっすぐに...。共感しました。
    ドキュメントで流れている音楽ももっと聴きたいと感じました。

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  2. 灰野敬二の音楽が生れ出る瞬間をとらえた稀有なドキュメンタリー。この作品の中での灰野さんは実に饒舌ですね。灰野さんに ここまで語らせた というだけで この作品には 金字塔的価値があります。そして 音楽に興味がない 灰野さんを全く知らない人が 見ても この作品はドキュメンタリーとして 何とも面白いわけです。そこが一番凄いところかもしれません。メジャーがしり込みして こんな素晴らしい題材をスルーしているうちに 設立して6年しかたっていないインディーズの映画会社が でっかい仕事をやってのけた。本当にうれしいですね。こういう出来事そのものが 灰野敬二的と言えるかもしれません。

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