2013年2月15日金曜日

いわし亭部長とフランシーヌ千里部員の音楽放談~『暗黒への挑戦』


第7回目 テーマ:『いま、聴いて欲しいこの一枚』 その2 『マウンテン ライヴ/暗黒への挑戦』


フランシーヌ千里です。かすかに春の気配が感じられるこのごろ。

みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
今回は 『いま、聴いて欲しいこの一枚』 第二回目です。

マウンテン・・・ 山のような巨漢が繰り広げるのびやかなギター!” といういわし亭部長の推薦のもと、私も聴いてみました。ロック バンドの基本型 ギター・ベース・ドラム” というトリオ形式の最高峰の一つ クリーム(英)のアメリカ版を目指して結成された とも言えるのがこのマウンテンとのこと。
私は、彼らの奏でる音と対峙しながら、それぞれの楽器が奏でるメロディやパワーをじっくりと真正面から受け止め、味わい、酔いました。
まさにエネルギーをもらえるアーティスト! このカッコよさの秘密とは・・・ !?





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『暗黒への挑戦』 ~ フェリックス・パッパラルディのセンスが冴える名演奏


ミシガン大学でクラシックを専攻したフェリックス・パッパラルディは、そのセンスを応用し、ベースをメロディ楽器として使い、従来のロックには存在しなかったベーシスト像を確立した。
長時間にわたるソロの演奏は対位法的と評されたが、対位法とは簡単に説明すると、伴奏 & メロディ(主旋律) & 裏メロディ(対旋律) という構造の作曲法をいう。
つまり、レズリー・ウエストのギター(主旋律)に対して、フェリックスのベースが対旋律として機能しているのである。

ジャズやフュージョンでは、チョッパー奏法が開発された時点で、簡単に主役を張ることが可能になったベースも、ロックではまだまだ縁の下の力持ち的な扱いをされており、1971年当時これは画期的なことといえた。

実はフェリックスはイギリスでかのエリック・クラプトン、ジャック・ブルース、ジンジャー・ベイカーを擁したロック史上最強のトリオの一つ、クリームをプロデュースした才人。
フェリックスが作曲、妻のゲイル・コリンズが作詞を担当して、クリームに楽曲を提供していたが、これはマウンテンでも同様で、今回、紹介する 「ナンタケット スレイライド」 も二人の共作であり、フェリックスはヴォーカルも担当している。また、アルバム ジャケットの印象的なイラストは、ゲイルの筆によるもの。

ナンタケット スレイライド ≒ ナンタケットのそりすべり とは、マサチューセッツ州ナンタケット島の鯨獲りの間で使われていた言葉である。捕鯨の際、もりを打ち込まれた鯨は猛スピードで逃げるが、そのためにもりで繋がったボートがひきずられ、まるでそりすべりの様相を呈する様を指している。
この作品は、そのナンタケットの港から愛する恋人を残し、3年間にわたって、捕鯨に出かける漁師のドラマである。曲が書かれた当時、フェリックスは実際にナンタケット島に住んでいた。

さて、この「ナンタケット スレイライド」、ライヴでは拡大され、このアルバムではなんと15分を越える大熱演となっている。
ライヴ アルバムとして屈指の名演であると同時に、先の対位法的とされるマウンテンの特徴が最大限に発揮されており、ベースの役割を根底から変えたとさえ言われたフェリックスの奏法は、技術的な側面から見ても、21世紀の今日ですら、十分衝撃的である。

マウンテンとは、ギタリスト レズリー・ウエストのビッグな体躯から想起されたネーミングであるが、その外見に似合わず、ギブソン レス ポールJr. から放たれる繊細かつ伸びやかで艶のある演奏は、あのマイケル・シェンカーが影響を受けたという正統派のギター サウンドで埋め尽くされている。このレズリーの主旋律に対し、フェリックスのギブソン EB-1 は、何とも抑揚に溢れたいわゆる泣きのフレーズを連発し、ヴァリエイション豊かな対旋律を量産しているのだ。

マウンテンは、プログレッシヴ ロックを志向したフェリックスとハード ロックを極めようとしたレズリーが対立し、残念ながら1972年に解散。
その後、フェリックスはプロデューサーとして日本のクリエイションを手がけ、全米でのコンサートを全面的にバックアップした。


1983年、フェリックスは何とも’70年代的な悲劇的結末を迎える。妻のゲイル・コリンズに射殺されたのである。

                   

マウンテン ライヴ/暗黒への挑戦

1. ロング レッド
2. 仕掛けられた罠
3. クロスローダー
4. ナンタケット スレイライド

レズリー・ウェスト
 (Leslie West) : Guitar Vocals
フェリックス・パッパラルディ
 (Felix Pappalardi) : Bass Vocals
コーキー・レイング
 (Corky Laing) : Drums
スティーブ・ナイト
 (Steve Knight) : Keyboards











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