2013年4月19日金曜日

魔法が使えないなら死にたい~誰にも似ていない 誰にも真似できない 大森靖子の世界

大森靖子  1st.フルアルバム 『 魔法が使えないなら死にたい 』 リリース ツアー


2013年3月20日 大森靖子は初のフルアルバム 『 魔法が使えないなら死にたい 』 をリリースした。岡林信康 ( フォーク ) も 村八分 ( ハードロック ) も ザ スターリン ( パンク ) も 戸川純 ( ニューウェーヴ ) も 松田聖子 ( 歌謡曲 ) も全部まとめて J-Pop と呼称されるようになって久しいゼロ年代の日本の大衆音楽に初めて登場したこれは J-Pop という呼称を頑なに拒否した音ではないか と思う。


♪ それ それ それ それ それ  ♪ あれ あれ あれ それ どれ
と、歌う大森靖子が、可愛くて仕方がない。


初めて一番前の席で、大森靖子の瞳を見ながら歌を聴く。大きな瞳がきらきら光って、泣いているように見える瞬間が何回もある。いわし亭は彼女のルックスにぞっこんなんだろうな と改めて実感した。

初めて逢ったのは、2012年の7月。あの時のふくよかな感じはもはやなく、未だに続くハードなライヴの中で研ぎ澄まされたルックスはシャープであり、獰猛な猫族を思わせる。本当に綺麗になったと思う。

顔 ちっちゃい。

大森靖子はアイドルとしても十分、イケてるんだが、彼女について書かれたことを読むと、相変わらずひどい表現が多くて、むっとする。

匿名性の高いネット上の誹謗中傷に関して、大森靖子は常に徹底抗戦を宣言する。その激烈な調子のブログを読んでいると、オフ ステージでお話をする時は、物凄く身構えてしまうのだけれども、実は単に可愛らしい、賢い、育ちの良いお嬢さんがそこにはいるだけで、会うたびにファンになってしまうのを自覚する。


大森靖子とそれ以外の歌手の違いは、対バンという場では、さらにあからさまになる。それ以外でしかない歌手からは、音楽をやる必然性が伝わってこない。もはや一億総カラオケ時代であり、お手軽な娯楽の一つとして音楽はある。CDだって、特別なものではなく、個人でも簡単に出せる時代なのだ。だからこそ、そこに “ 音楽しかない ” という強い思いがなければ、それはたくさんのそれ以外の中に埋もれてしまうだろう。

確かなアイデンティティ~ それは、いわし亭的に言えば “ 痛み ” であり “ 他者との違和感 ” であり “ 現状への不平不満 ” なのだが、それこそいわし亭の思うロックなるものの正体なのだ。大森靖子は存在そのものが、“ 違和感 ” であり、それを対象化した彼女の音楽は、いわし亭にとってロック以外の何物でもない。


我々は今まさに奇跡を目撃しているのであって、アーティストのピークの瞬間を共有できる幸運は、そう何度も経験できるものではない ということを明言しておきたい。


半年前、暴風雨のように歌われていた楽曲は影をひそめ、もっと内省的で、しかし恐ろしい風景を描き出すことに歌の情感は移っている。鋭利な剃刀をギラつかせていたあの感じはもはやなく、もっと静かにひたひたと後ろからやってくる窒息性の一人一殺。
「 夏果て 」 のような楽曲は、大森靖子にしか歌えないし、作れない。彼女は誰にも似ていないし、誰にも真似できない。


MCで本人も語ってたように、移動の頻繁な今回のツアー、決して体調がいいわけではなかった。ホールの近くの薬局で葛根湯を処方してもらったらしい。しかし、そうしたコンディションとは全く別のところに “ 音楽の魔法 ” は存在した。過去、半年間で大森靖子のステージは何度か見ているが、今回が最も凄味を感じさせてくれるものに仕上がった。
“ 魔法が使えないなら死にたい ・・・ ” これが新譜のタイトルだけれども、大森靖子はもはや、肉体的な条件その他を払拭し、ステージ上で魔法を使う方法を手に入れたように感じる。


大森靖子を聴いた多くのリスナー達は、何とか大森靖子を言葉に置き換えようと無駄な努力をする。このブログだって、返り討ちにあった言葉の残骸であり、結局、それはいわし亭の個人的な思い込みでしかない。


あまい 
大森靖子のブログ 4月13日


もはやここに記されている言葉を紹介するだけで、いわし亭の目的は120%果たされていると言って良い。今、大森靖子は軽々と別の次元に突き抜けてしまった。そのスピードにいわし亭は追いつけない。


マホーツアー

常に私は私が音楽に成り得ないという絶望をしょっていて、それはミュージシャン全員が持っているものだと思っていたけど、そうじゃなかった。

すんごく良い声で、すんごく良いうたを歌えば、みんな聴いてくれるんだって信じてたけど違った。

急に爆音で、ときどき聴こえるか聴こえないかの音で、気をひいたけど無駄だった。それが6年間やってきた弾き語りのライブを通してわたしが学んだこと。音楽は全然魔法なんかじゃないです。
そんなことない、とおもうバンドマンは、まずエレキギターを捨ててください。自分の爆音の音楽がお客さんにどれだけ高圧的で、逃げ場のない一方的なものかということを、自覚してください、それは魔法ではなく、拷問です。

魔法が使えないなら死にたい。ほんとうに、そうおもった、音楽に完全に100%絶望したら、死ぬしかない、だから今生きなきゃ、止まれなかった、狂ったように毎日毎日ライブをして、誰より音楽を求めていたつもりだった。そんなに欲しがったって、きっと手に入れたらすぐ消えてしまうよ。それでもいい、一瞬でもいいから触れたい、そのためなら、何時間かけても、どこへでもいく。私か私の代わりの誰かが、私の音楽と一緒になれる瞬間があり得るのなら。

まだそうおもって、今回のツアーを続けています。ばかでしょもう




大森靖子公式ページ






『魔法が使えないなら死にたい』

1. KITTY’S BLUES
2. 音楽を捨てよ、そして音楽へ
3. 新宿
4. ハンドメイドホーム
5. あたし天使の堪忍袋
6. 夏果て
7. 鮪漁船のうた
8. 背中のジッパー
9. 最終公演
10. I love you
11. 歌謡曲
12. 高円寺
13. 秘めごと
14. 魔法が使えないなら





最後にツアー スケジュールが出るが、いわし亭がここに記録したのは、大阪梅田と京都のライヴである。まだ間に合うステージがあるのなら、是非、聴きに行ってみるべきだ。



◎ インディーズに咲いた硬質な花 大森靖子




0 件のコメント:

コメントを投稿