2013年5月24日金曜日

いわし亭部長の Net Radio Station ~イタリアン プログレフェスティヴァル マウロ・パガーニ/アレア レポート


第11回目 テーマ: 『 イタリアン プログレッシブロック フェスティヴァル Ⅲ 最終楽章 』

フランシーヌ千里です。このブログでは、音楽ばかのいわし亭部長のリアルでレア? な音楽ライフをお伝えしています。
今回は、ゴールデンウィークに川崎のクラブ チッタで開催された 『 イタリアン プログレッシブロック フェスティヴァル Ⅲ 最終楽章 』 について聞きました。
『 イタリアン プログレッシブロック フェスティヴァル 』! イタリアン? プログレフェス? どんな音楽が演奏されるのか? 聴いている人たちはどんな人たちなのか? 興味津々でした。
いわし亭部長の話を聞いて、行きたくてもそう易々とは行けない、入場料も高価な大人のためのフェス。愛好家も集まって、3日間開催される中、連続で参加されている方もいらっしゃったようです。
そんな大人のためのフェスは、みなさん椅子に座って落ち着いて ( プログレなのでクラッシック的な要素もあり、音をじっくりと楽しむ方も多い ) 聴いておられたとのこと!!
これまで3年連続で開催されたそうですが、1回目にはなんとあの “ オザンナ ” も来日していたそうですよ。
今回、期待たっぷりにいわし亭部長が乗り込んだ一大イヴェントの報告をどうぞ!





マウロ・パガーニ ( Mauro Pagani ) と
プレミアータ フォルネリア マルコーニ ( Premiata Forneria Marconi )

“ マルコーニおばさんのおいしいパン屋 ” という意味。
’73年の世界進出時、頭文字を取って PFM と略称されたが、プログレ ファンの間では、これをフルネームで言えなければモグリとされた ( 笑 )

’70年結成。 ’72年、ELP のイタリア公演のオープニングアクトを務めて、グレッグ・レイクに注目され、ピート・シンフィールドのプロデュースの元、英語詞主体のアルバム 『 幻の映像 』 を制作し、ELP が主催するマンティコア レーベルから全世界に発信された。日本でも国際デビュー直後から注目され、’75年11月の初来日で計4回も公演を行っている。

’76年の 『 チョコレート キングス 』 を機にマウロ・パガーニ ( ヴァイオリン、フルート、ヴォーカル ) が脱退、その後もグループの改編が続いたが、現在もオリジナル メンバーのフランツ・ディ・チョッチョ ( ドラム、ヴォーカル )、フランコ・ムッシーダ ( ギター、ヴォーカル )、ヤン・パトリック・ジヴァス ( ベース ) の3人が在籍し、数度の休止を挟みつつも、音楽活動を続けている。プログレッシヴロック フェスティヴァルでは、当然のことながらパート Ⅰ で来日している。

PFM との衝撃的な出会いはユーロロックのステレオタイプとして、ユーロロック ≒ シンフォニックロック ≒ PFM として、決定的な影響力を持った。しかし、フェスティヴァルパート Ⅰ で来日した PFM には、すでにマウロ・パガーニというスタープレーヤーがおらず、画竜点睛を欠いていた。
日本のプログレ ファンにとって思い入れの対象は、国際デビュー盤 『 幻の映像 』 におけるマウロ・パガーニの流麗なヴァイオリンとフルートの響きであり、マウロ・パガーニの再来日はファンの見果てぬ夢であったのだ。実はイタリアン プログレッシヴロック フェスティヴァルが企画されるより前に、マウロ・パガーニの来日は二度も試みられたが、諸般の事情で流れ、今回が三度目の正直だった。

現在、マウロ・パガーニは地中海音楽に半生を捧げている。最初のソロアルバムとして ’78年に発表された 『 地中海の伝説 』 は今なお、地中海音楽を愛する者にとっての最重要アルバムである。
技術的な高さを無意味に誇示するわけではなく、歌心を大切にした牧歌的なテイストを併せ持ちながらしかし、艶やかなヴァイオリンの音色をフィーチャして、弾くべきところはきっちり弾いてみせる高度なテクニックに裏付けられた、これだけでご飯三杯はいける大傑作なのだ。
『 地中海の伝説 』 には、この夜、共演したAREAのメンバーをまじえたジャズ ロック風の楽曲も収録されており、案の定、最後のアンコールではパガーニとアレアの夢の競演も実現した。

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アレア ( AREA )

ラテン語で “ Ardorem repono in anima ” の略で “ 魂に情熱を注ぐ ” という意味。
イタリアのプログレッシヴロック グループの中では、特にフリー ジャズ色の強いバンドではあるが、非常に広範な音楽性を持ち、ヴォーカルのデメトリオ・ストラトス全盛時には、ヨーロッパ最強とも言われた。

PFM の圧倒的な影響でイタリアンロックには、ジャズをベースにしたバンドは珍しい印象があるが実は、オザンナもニュートロルスもジャス テイストの素晴らしいアルバムを発表しており、また、今回招聘されたマクソフォーネ、前回招聘されたアルティ エ メスティエリなど、地中海音楽やクラシック、ジャズを融合させたバンドも意外に多い。
デメトリオ・ストラトス ( ヴォーカル )、ジュリオ・カピオッツォ ( ドラム )、パトリツィオ・ファリセッリ ( キーボード ) を中心に ’72年に結成。“ International Popular Group ” という自称通り、イタリアだけにとらわれない無国籍性の高い作品を凄まじいテクニックを駆使して、量産している。

強い政治性や批評性が喧伝されるが、ヴァレリー・ソラナス ( アンディ・ウォーホルを暗殺しようとしたことで有名なフェミニスト ) やヴィオレット・ノジエール ( フランスの監督 クロード・シャブロルが ’78年に映画化した実在の女性犯罪者 ) などを題材にしたり、アンドレ・ブルトン ( シュールレアリスト。ノジエールに霊感を得たとされる ) やジャック・ラカン ( フランスの構造主義、ポスト構造主義思想に影響力を持った精神分析家 ) の名前が歌詞に散見されるなど、自由自在に題材を選び、音楽表現の限界に挑み続けた。

’79年 ストラトスが白血病により死去した後も活動を継続したが、’00年、カピオッツォの急逝により、残念ながらいったん解散する。

イタリアのプログレッシヴロック グループの多くは、時とともにその音楽性をコマーシャルな方向へと修整していったが、アレアはストラトスを失ってなお、独特のアヴァンギャルドな音楽性を保っていた。
今回、来日したオリジナル メンバーはキーボードのファリセッリだけであるが、それでもバンドはやはりアレア以外の何ものでもなく、その硬派なイメージを損なうことなく、見事なステージを見せてくれた。

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良い! 
もはやオリジナル メンバーは還暦を迎えるロートルのはずなのに、演奏はすこぶる良い! 

パートⅠ 今を去ること、2年前 2011年11月 秋の陣 ― 夢のまた夢  
パートⅡ 2012年4月 春の陣 ― ロマンの誕生 

そして今回ついに、マウロ・パガーニを招聘できたということで、この素晴らしい企画も最後となった。
残念ながらイタリアン プログレッシヴ ロックにおいて、いわし亭が最もインパクトを受けたオザンナは、何とこのパートⅠ 開催時に招聘されており、その意味では痛恨で、企画者のクラブチッタはこれで最後と言わず、今後も可能性のある限り、続けて欲しいと思う。

イタリアには シンガー ソング ライター ≒ カンタトゥーレという魅力的なジャンルが確立され、歌心やメロディを大切にする歴史と伝統がある。プログレッシヴロックと言うと、どうしても難解でテクニカルな点ばかりが強調されるが、イタリアのプログレにはカンタトゥーレの精神がしっかり息づいており、言葉が理解できなくても、そのテイストだけで十分に楽しめるのだ。

しかもこの日は、マウロ・パガーニの牧歌的な第一部に、アレアの硬派でアヴァンギャルドな第二部、さらにアンコールでの奇跡の合体とファンにとっては、見果てぬ夢の実現された記念すべき一夜となった。
実際、過去3回にわたるこのフェスティヴァルは、本国、イタリアでもおそらく実現しないであろう豪華共演の連続であり、日本のプログレ熱が世界的に見ても未だ、いかに高いかを立証したものとも言える。




地中海の伝説 

1. ヨーロッパの曙

2. アルジエント
3. 哀しみのヴァイオリン
4. 馨しき街
5. 木々は歌う ( パートⅠ )
6. コロン
7. 海の調べ
8. 木々は歌う ( パートⅡ )

クラック! 

1. 白い象
2. オデッサのリンゴ
3. 巨大都市
4. のたうつ怒り
5. 栄光と革命
6. インプロージョン
7. アレア5






2 件のコメント:

  1. 川崎は私もよくいくエリアでして。
    クラブチッタあたりがちょっとおしゃれなところですよね。
    よくいくのがセルビアンナイトというライブハウスなのですが、そこも良いハコだと思います。

    それはさておき、贅沢なライブだったんですね!
    生で聞けるというのは本当に貴重なことで、そこに足を運ぼうという人が多いのはよくわかります。

    ところで、MCとかってほとんどないんですか?
    握手できたりとかしないんですかね?やっぱり?
    そういうスタイルではないのかな?
    少しでもそういう時間があると、もっと行きたくなるし人も集まるような気がしますね。
    今のアーティストが何を考えているのか、どのような状態でどのような気持ちで音楽を続けているのか、といったことが生で聞けたらうれしいなあ。
    もちろん通訳は必要でしょうけどね~。

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  2. ヨーロッパのアーティストは英語も話せるので、簡単な英語のMCは理解できますね。あとは主催者側の通訳の方が、難しい内容については伝えてくれました。これから演奏する曲目に関するお願いや由来等々ですね。アレアの時にお持ちの家の鍵をふって、カチャカチャいわせて、演奏に参加してほしいというようなお話がありました。古い家の鍵はお守りになるそうです。残念ながら、彼らとコミュニケーションをとる機会はなかったですが、例えば即席のサイン会なんかやってくれたら、置いてあるCDもソク完売でしょうにね。そのあたりは、少し気難しいアーティストだったのかもしれません。当日のライヴ録音もキャンセルされてしまいましたしね。

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