2013年1月25日金曜日

いわし亭部長とフランシーヌ千里部員の音楽放談~『白呪』


第6回目 テーマ:『いま、聴いて欲しいこの一枚』 その1 『白呪』



フランシーヌ千里です。きびしい寒さが続きますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
さて、2013年、明けて1回目の音楽放談です。
今日から新シリーズ: 『いま、聴いて欲しいこの一枚』 をはじめます。


なぜ、こういうテーマを扱うことになったかと言うと… そもそもこの音楽倶楽部発足のきっかけは、いわし亭部長の積年の想い 必ずしも質の高い音楽が、世の中に、広く受け入れられている という訳ではない” という矛盾感にありました。
つまり 「売れている音楽」=「いい音楽」 というわけではない ということで、それでも別にいいのではありますが、もっともっと音楽に関する知識があれば、さらに多様な音楽が、世の中で受け入れられるのでは? そうであってほしい といういわし亭部長の熱い想いがあります。

マーケットに左右されるのではなく、ひとりひとりがもっと主体的に、聴きたいものを選べるようになれば。そのために、自分にできることは、これまで得た知識や情報を発信することだ” という いわし亭部長のそんな想いに私たちも共鳴して、この倶楽部で活動をしています。


いわし亭部長による 聴いてほしいけれど廃盤になったり、手に入れにくい、などのとっておきの作品” について。今回、いわし亭部長が真っ先に取り上げたのが 「ヨイトマケの唄」 です。2012年末、<紅白歌合戦>でも歌われ、もはや多くの人たちが知っている歌となりましたが、今日、改めて共有するところまで出来るようになるには、何十年もかかったこの歌。ぜひ、いわし亭部長の想いとともにご覧ください。






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77歳にして紅白歌合戦に初出場した美輪明宏が歌った 「ヨイトマケの唄」 は、体調やマイブーム、その他の問題さえなければ、十中八九おそらく挙げるであろう、日本歌謡史においていわし亭が最も好きな楽曲だ。6分弱の大作のため、“歌手一人の持ち時間に制約のある紅白歌合戦では歌いきれない” として、美輪明宏はNHKからのオファーを断り続けてきた。



ステージを終えた美輪明宏は、“観客の一人一人の人生に、自分の歌が染み込んでいくのが分かった。最近は命を捨ててまで、我が子の命を守る無償の愛が、希薄になっている。その無償の愛を伝えたくて歌いました” と語った。

時代が歌を希求したのだ。

ネット上でも反響は大きく、ツイッターでは絶賛のコメントが積み重なり、普段は読むに堪えない 2ちゃんねる ですら紅白のスレッドでは、美輪明宏を褒めたたえるコメントで埋め尽くされた。

“親御さんのいない子供はいない。今、親が子を殺し、子が親を殺すことがよく起きている。一人でも、そういう人がいなくなるように、起こらなくなるようにという曲です”

歌は、時代の空気を呼吸して、生まれる。その意味で、1964年に生まれたこの曲が、これほどまでに絶賛されたのは、残念ながら、今がそういう時代ではないからだ。だからこそ新しい聴き手を獲得し、現代の楽曲として再生したのである。


  ♪ 苦労 苦労で 死んでった 母ちゃん見てくれ この姿
    どんなきれいな唄よりも どんなきれいな声よりも
    僕をはげまし慰めた 母ちゃんの唄こそ 世界一 ♪


NHKのシリーズ企画 『その時、歌は生まれた』 でこの 「ヨイトマケの唄」 が取り上げられた時、取材を受けた作曲家 なかにし礼のコメントは圧巻だった。なかにしは、この作品を “日本のあらゆる歌を含めて一番いい歌である” と評し、その根拠を 1 ドラマ性 2 言葉の正確さ 3 場面転換 4 取り上げたテーマ 5 メロディ の5点にわたって述べている。同業者にここまで言わしめてしまうところに、この楽曲の前人未到の境地がある。
その特番の中では、元NET現テレビ朝日のモーニングショーで唄われた際の反響として、約2万通の投書が届いた というエピソードも紹介されている。


美輪さんのリサイタルに接するチャンスがあったなら、迷わずチケットを買って、聴きに行かれた方が良い。1935年生まれの美輪さんも、還暦を越えて久しい。何時、活動をやめてしまうかも分からない。美輪さんが引退してしまう前に、ぜひとも生で 「ヨイトマケの唄」 を経験することをお勧めする。

きっと、あなたの中の何かが変わるだろう。





『白呪』

 1. 祖国と女達(従軍慰安婦の唄)
 2. 悪魔
 3. ボタ山の星
 4. ヨイトマケの唄
 5. 亡霊達の行進
 6. 陽はまた昇る
 7. 別れの子守唄
 8. 妾のジゴロ
 9. あたしはドジな女
10. さいはての海に唄う
11. 星の流れに (ボーナストラック)
12. ミロール (ボーナストラック)                                          





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#2 美輪明宏
 #2.1 「 ヨイトマケの唄 」 ~ かつて日本語で歌われた中で最も優れた唄
 #2.2 「 愛の讃歌 」 は誰に捧げられたのか?







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