2013年2月22日金曜日

連載 キノコノトリコ~キノコホテル物語 第4回



【第4回】 リズムセクション 電気べース担当:エマニュエル小湊 & ドラムス担当:ファビエンヌ猪苗代

デビュー当初のイメージから、ガレージ歌謡と評されながらも、時にはダルくブルージーに、時にノイジーに、はたまたパンク化、あるいはプログレ化するキノコホテル サウンドを支えるには、単に楽器を扱う技術が高い というだけでなく、かなり広範な音楽性やセンスが求められる。その土台を担う、エマニュエル秘書 ( 以下 エマ ) とファビエンヌ ( 以下 ファービー ) のリズムセクションは、相当高いレベルの及第点と言って良いだろう。

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web Rooftop ('10年2月号)

エマ 前任のベーシストが辞めた時に “ ちょっとベースやってみない? ” と誘われて、それで2ヶ月間ぐらいサポートをしていたんです。

マリアンヌ その時は彼女がまだ正式にはできないということだったので、オーディションをしていて、そこに立ち会ってもらっていたんです。

エマ そのうちにだんだんうずうずしてきて、ある時 “ 私、やっぱり正式メンバーになりたい!” って言ったんです。オーディションを見ているうちに “ こんな子にやらせるぐらいなら私がやる!” って。

マリアンヌ 私も初めからそうなるのを狙っていたんです。しめしめと。

──マリアンヌさんの策略にまんまと乗せられた訳ですね ( 笑 ) 最初から正式メンバーにならなかった理由は何だったんですか?

エマ 私はそもそも女の子だけでバンドを組むっていう考えがなかったんです。でもサポートでやってるうちにだんだん楽しくなってきて。女の子だけだと衣装も凝ったりできるし、なによりもやっている曲が演奏していてどれも楽しいものだったんです

──それまでエマさんはどんなバンドをやってたんですか?

エマ 下北沢によくあるようなギター系のバンドです。男の子がさわやかに青春を歌うような ( 笑 )

マリアンヌ 草食系男子がね!


──調教の話に戻りますが、エマさんはステージ上でもよく支配人にいじられていてますよね。あれはどうなんですか?

エマ まあ… 嫌いじゃないです

ケメ いつも漏らしてるよね(笑)

エマ 一番対極的というか、支配人はSですが私はドMなので… 利害関係が一致してるんです


──エマさんの淡々としたプレイが対照的です。余裕が有りそうな感じで

マリアンヌ 余裕がないから動けないだけよ

エマ あえて冷静にやってるみたいに見られてるんですが…

マリアンヌ 本当は一歩でも動くとおしっこ漏らしちゃうから、この娘

エマ はい、たいがいちびってます… いつも換えのパンツ持ってますから

マリアンヌ 漏らしながらもがんばって弾いてる所が健気で可愛いの。涙目でね

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web TOWER RECORDS bounce ('10年2月8日更新号)


──あと、衣装には抵抗ありませんでした?

エマ 意外となかったですね。こういう時じゃないとこんな格好も、膝上を出すなんてこともしないでしょうから、楽しくやってます 

マリアンヌ かわいいんだから、普段からもっと脚を出せばいいのに

エマ かわいいと脚は別で…

マリアンヌ かわいい子は、脚もかわいいのよ!

──エマさんの衣装は他のメンバーと比べて、若干タイトかつ丈が短めのような気も

エマ それはたまたま… 

マリアンヌ うっかり洗濯機で洗っちゃったから縮んだのよ、この子だけ(笑)

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エマニュエル秘書は、ライヴの間にも、マリアンヌ支配人のセクハラを一手に引き受ける “ドM” キャラが実に素晴らしい。 “背が低いので胸元の空いた服ばかり着ます” というエマ自身の発言も含めて、存在自体 “ドM” そのものなのである(爆)
無骨で巨大なベースという楽器は、バンドの中で一番小柄なエマには、最も似つかわしくない楽器だし、その演奏姿からは “健気” という言葉がにじみ出て、思わず ♪ 守ってあげたい~ ♪ という気分にさせられる。
このあたりのマリアンヌ支配人の采配は見事で、“エマはロリコンやS男に需要が高いようです” という言葉通りの展開になっているなぁ と…

2010年には、インターFM(76.1Hz)で、毎週土曜日27時15分から、キノコホテル地下にあると喧伝されるラウンジ “NAMECO”(!) から 二人のトークを放送していたこともある。
この放送、今考えると、深夜帯というか明け方の放送ということも相俟って、恐るべきプレミア度であるが、その内容は、グダグダ過ぎ、放送禁止の内容多過ぎ ということで4カ月程度で打ち切られている(笑) 篠洲ルスルさんのブログ『星ぶどうぱん』に、感想が沢山、綴られているので、興味のある方は覗いてみられるといいかも。 

外伝でも触れたが、良いバンドのベーシストは、実に奥ゆかしい性格で、リーダー的な資質に恵まれたプレイヤーが多いのだ。エマニュエル秘書の場合、彼女のべーシストとしての資質が、同時に秘書という業務に実にうまく当てはまったと言え、そのポジションから、公務としてのインタヴュー、広報活動、キャンペーンなど、マリアンヌ支配人と行動を共にすることが多かった。













※ マリアンヌ支配人の乱れたウィッグを直すエマ秘書。本当に仲の良いふたり。まるで姉妹のよう


2011年4月の『マリアンヌの恍惚』 の発売直後には、キャンペーンの一環として、タワーレコードであの黄色いロゴのエプロンをつけて、レジをやった(!) りしたこともあり、こうしたサプライズ演出も含めて、エマの機動力はかなり高かった。

マリアンヌ支配人のツイッターによれば、プライヴェートでのお付き合いはなかった とのことだが、支配人のMC(聴く度に、この人の知性の瞬発力は相当なものだ と感じるのは、いわし亭だけではあるまい)にも、物怖じせず、絶妙の掛け合いで応じる、そのなんとも心得た感じは、長い間、同じ時間を共有したものだけに通じるものなのだ。

いわし亭が初めて参加した2010年10月3日(日) 大阪 心斎橋CLUB QUATTRO 単独公演 サロン ド キノコ~秋の人間狩り~では

マリアンヌ 違うか あれか 生理前なんとかかんとかだ
エマ あ、PMSですね。あれ、大変なんですよ
マリアンヌ そう…  らしいよ
エマ 支配人(微笑)  生理ないんですか?

(ここで、フロア、ドッ とうける)

マリアンヌ 2ちゃんねるとか言わないの! あんなもんばっかり見てると、地獄に落ちるよ
エマ 細木数子みたい!

とMCが超絶暴走に到り、いわし亭が笑い転げたのは言うまでもない。

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web Rooftop ('10年8月号)

──支配人はエマさんとファビエンヌさんに対しては注文が多そうですね

マリアンヌ ええ、相当うるさいわよ。まず最初にリズムから作っていくので

エマ フレーズの指定は多いですね。それを元に自分なりに広げていきます

マリアンヌ ベース ラインから浮かんでくる曲が多いのよ

エマ 「ピーコック ベイビー」 もそうでしたよね

マリアンヌ そうね。ベース ラインありきのアレンジは今回も多かったし、エマに “こういうフレーズを弾いて” と指示して発展していくケースがほとんどです。ベース ラインが決まると、ドラムの方向性も自ずと決まるわけ。昔は、ワタクシがリズムを打ち込んできたものを聴かせていたんだけど、最近は機械に触るのが面倒くさくなっちゃって、全部口伝えでやっているの。そしたら余計手間が掛かっちゃって、どういうやり方が効率的なのか模索している状態かも。

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ライヴ後半、最大の山場である 「 キノコノトリコ 」 「 #84 」 ~ メンバー紹介 ~ 「 キノコホテル唱歌 」 と続くメドレーでは、楽曲のつなぎが実にスムーズであり、バンドは切れ味抜群の冴えを見せる。ここで聴けるよく練られたコンビネーションは、このメンバーが過去最高であることが、説得力十分に伝わってくる。

ファービーは、ライヴ全体の流れを非常によく見ていて、ライヴの間中、ドラマー本来の役割である司令塔として、スタート カウントはもちろん、左右のエマ、ケメとアイコンタクトをとりながら、曲転換の合図を冷静に、かつダイナミックに出して、よどみのない見事な進行を見せる。





楽曲の要所要所で細かい音符のフィル インを駆使して、メリハリをつけながら、収まるべきところにきちんと収まる という印象のファービーのドラムは、聴いていても、決まった! 感が強くて、実に気持ちが良い。
ホテル サウンドを支える細かいスキルはもちろん、スロー テンポの重いビートも得意としており、しかもコーラスまで担当している。ファービーの美しいハモりを聴いていて、ソロの唄声も! と欲張るのは、何もいわし亭だけではあるまい。

演奏中の表情も素晴らしく魅力的で、とにかく演奏していること自体が楽しくて仕方がない というそのストレートすぎる太陽のような天然の笑顔は、いささか病的な気配が充満するキノコホテルにあっては、一服の清涼剤である。
いつも元気いっぱいのファービーのキャラは、彼女のブログ(ふぁ~びぃ~記)を見るとますます納得させられるのだが、案の定、ご飯のお話が満載なのだ(笑)  

ライヴでは、男子女子ともに、彼女への声援が一番多いのだが、それも無理からぬことか と

“ 人柄重視、笑顔のまぶしい女子が好きな男性はファビに行き… ” というマリアンヌ支配人の言葉を思い出して欲しい。

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web TOWER RECORDS bounce ('10年2月8日更新号)

──これまでのバンド歴は?

ファビエンヌ みんなみたいに天才肌ではないので、けっこういろいろとやってるんですけど、これといったものはないんですよね

──ずっとドラムスだったんですか?

ファビエンヌ そうなんです。ずっとドラマーになりたくて。小学生の時、鼓笛隊が持ってたスネアドラムを見て これだ! って。ドラムがいちばん格好良いと。でも、ドラム セットはおろかスネアすら買ってもらえなかったので、ちゃんと叩きはじめたのは大人になってからで

──鼓笛隊のドラム、いわゆる小太鼓って、けっこうな花形楽器ですよね。やりたい子たちも多かったんじゃないかと思うんですけど

ファビエンヌ もう、マンガ本を積み上げて、菜箸で叩きながら夜な夜な練習して、その座を勝ち獲ったんですよ


──従業員のなかでは、支配人に対してもっとも従順そうに見えますが。

ファビエンヌ そうですか?

マリアンヌ いやもう、頑固ですよぉ。でも、そこがかわいいんだけど (微笑)

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web Rooftop ('10年2月号)

──ファビエンヌさんは求人広告に応募したんですよね?

ファビエンヌ 当時やっていたバンドが一区切りして、次の活動拠点を探している時にキノコホテルの音源 (当時のキノコホテル唯一のシングル盤 『真っ赤なゼリー』) を聴いたんです。それが自分が気に入っていた音楽とフィーリングがぴったりで、ああこの人について行こうと思ったのが応募したきっかけです

──気に入っていた音楽とは?

ファビエンヌ 音楽性は全然違うんですけど、生き様というか、発信しているものに近いものを感じて、ああこれは絶対おもしろいはずだと

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<追記>

なお、残念ながら、この項の主役の一人 エマニュエル秘書は、2012年12月9日 東京キネマ倶楽部で行われた単独実演会 『サロン・ド・キノコ ~四次元の美学・後編』 にて、キノコホテルを退職しました。本名の横山由佳里さんに戻った彼女は、すでに新しい活動を開始しています。詳細については、『連載 キノコノトリコ~キノコホテル物語 外伝/エマニュエル小湊 秘書~キノコホテル退職直前実演会』 をご覧ください。

また、エマニュエル秘書に代わる新従業員 ジュリエッタ霧島は、2012年12月20日 “東雲音楽工業忘年会~マリアンヌ支配人お誕生日会” でお披露目されました。彼女の活躍についても、ライヴ レポートを交えて 『連載 キノコノトリコ~キノコホテル物語 特報/新従業員ジュリエッタ霧島颯爽登場!』 にて、近日中にお知らせしたいと思います。





本連載のタイトルをいただいたキノコホテル初期からの代表的ナンバー。タイトルから受ける印象通りのサイケな装飾が施され、幻覚的ムードの漂う危険な (笑) PVに仕上がっている。
ここでも、ファービーの食いしん坊キャラは健在で、何とも微笑ましい。


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【第2回】 現在に至るめまぐるしいメンバー チェンジ(2013/2/1 改訂)

【第3回】 キノコ再生~最強メンバー 集結

【外伝】エマニュエル小湊 秘書~キノコホテル退職直前実演会
     2012年12月6日 サロン・ド・キノコ~四次元の美学・名古屋編 クラブクアトロ にて

【第4回】 リズムセクション 電気ベース担当:エマニュエル小湊 & ドラムス担当:ファビエンヌ猪苗代

【特報】新従業員 ジュリエッタ霧島 颯爽登場!(1)(2)(3)(4)
   2013年2月9日 サロン・ド・キノコ~河原町炎上・第一夜 京都磔磔 
   2013年2月16日 FUZZ! presents キノコホテル実演会 高松swagg
   2013年5月24日 サロン・ド・キノコ~淫力魔女の生贄・神戸編 太陽と虎
   2013年5月25日 サロン・ド・キノコ~淫力魔女の生贄・大阪梅田編 Shangri-La
   2013年8月19日 サロン・ド・キノコ  神戸 太陽と虎

【緊急レポート】その時なにが起こったの? 風雲急! マリアンヌ支配人、倒れる

【 緊急レポート 】 「 ノイジー・ベイビー 」 カヴァー騒動顛末記 ~ 歌は誰のものなのか?

【 第5回 】 電気ギター担当:イザベル=ケメ鴨川






4 件のコメント:

  1. こんばんは! かつてのインタビューのハイライトが見事に構成されていて、エマ秘書時代のキノコホテルを偲ぶにこの記事一本で事足りるともいえる濃密な内容でした。札幌ピヴォ店の写真をチョイスされているのも素晴しいですね。MCの再現が目に浮ぶようで笑ってしまいましたが、ああいった掛け合いは回を追うごとに少なくとも東京では殆どなくなっていたのが改めて残念です。横山さんも非常に面白いですが。私の不正確なブログもちゃっかり紹介していただき有難うございます。
    熟達の聴き手ならではのジュリ島さんへのご感想や、ケメラジオのコーナー等々楽しみにしております。

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    1. 今回もお褒めいただき、書いている方としてもとても張り合いがあります。ありがとうございます。しかし、エマ秘書のレジ、札幌のタワーレコードと一発で見抜くところなんか、さすがですね。この時は、大阪でも同じようなキャンペーンがあるのではないかと、仕事が手につかなかったことを懐かしく思い出しました。ジュリ島さんを擁する新生キノコホテルに関しては、二月に京都と高松で聴いて来ました。そのライヴ レポートを鋭意、推敲中ですので、お楽しみに。ケメラジオは、むちゃぶり十番勝負が七番で止まっていますので、引き続き無理難題をリクエストしようと思ってます(笑)

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  2. こんにちは。
    この前、出張の際に立ち寄った秋葉原のタワーレコードに、キノコホテルのコーナーが出来ていました(^_^)
    いよいよ人気が出てくる感じでしょうかねぇ。楽しみです。

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    1. そうですね。タワーレコードはインストアライヴや等身大パネル展など、熱心なバックアップを展開していますね。大阪でもぜひ、やってもらいたいものです。次回の関西でのライヴは5月。神戸と梅田にやっと、お目見えです。

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