連載 キノコノトリコ～キノコホテル物語 【特報】（２）

新従業員　ジュリエッタ霧島　颯爽登場！　（２）


さて、ではキノコホテルのジュリエッタ霧島 （ マリアンヌ支配人は実演会では、彼女をジュリ島または ＪＫ と呼んでいた ） としての彼女はどうか？
前任者であるエマニュエル秘書が作り上げたフォーマットがあるので、ジュリ島の演奏も、基本それに則ったものになるのは当然なのだが、２月と５月の実演会を比較すると少しずつ変化が見えてきている。それは、いわゆる場違い感の大幅な減少で、もはや今、現在のキノコホテルには最初から彼女がいたかのような印象さえ醸し出されてきた。

それにしても、二人組のシマシマエレクトリックで潤沢な演奏を聞かせているジュリ島の技術が、キノコホテルの従来の楽曲の難易度に対して、かなり過剰であることは否めない。ジュリ島のサウンドは、いわゆるベース的な鳴り方ではなく、かなりの割合でイザベル＝ケメ鴨川の電気ギターのメロディ　ラインをなぞっており、ちょっと聴くとツインリードにすら思える。この演奏スタイルは以前、当サイトでもご紹介したマウンテンのフェリックス・パパラルディが得意とした対位法ではないかと、思い当たった。

ロック史上最強トリオの惹句が未だに説得力を失っていない “ クリーム ” のドラマー　ジンジャー・ベイカーは、ベーシスト　ジャック・ブルースがほとんどリード楽器同然にメロディを弾きまくるのに業を煮やし、“ おまえ　弾きすぎ ” って怒ったと言われている ( 笑 ) 　
アコースティック楽器だけに、プレーヤーのスキルにかかわらず音量的にも体力的にも当然、限界のあるドラム側からのこのクレームは、至極まっとうなものだ。

翻ってキノコホテル。
いわし亭は２月にジュリ島のプレイを見て、もともと手数で勝負するタイプではないドラマー　ファービーは、ジュリ島にあれだけ弾かれたら、かなり厳しいのではないか　と感じていた。
こうしたジュリ島の過剰なテクニックが、これまでのキノコホテルの楽曲に果たして必要なのかどうか？　は、一考を要するだろう。ただ、キノコホテルは生粋のライヴ　バンドであり、ライヴの数をこなしながら、調子を上げていくバンドでもある。２０１２年末から続くライヴを確認すると、実際にはその過剰さが、キノコホテル全体のポテンシャルを上げているのもまた確かなのだ。そうなるとこのメンバーで作り出される新しいアンサンブル、完全なる新曲の登場こそが、ポイントになってくる。
従来のキノコテイストを継承しつつも、今後、リリースされる作品にジュリ島の過剰なテクニックが、どのように生かされていくのか？　は、かなり興味深いテーマなのだ。その意味で、５月１日にリリースされた 『 マリアンヌの逆襲 』 は、ジュリ島のテクニックとそれがキノコホテルに及ぼす影響範囲こそが、裏メニュー的な最大の聴きどころと言えよう。
あるいは、これまでの代表曲はジュリ島のテクニックによってどのように、換骨奪胎されていくのか。

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ＪＵＮＧＬＥ★ＬＩＦＥ　（ ＶＯＬ.１８５　２０１３年５月１日 ）

──　ベースとの相乗効果で、リズム隊を組むドラムの音も良くなったりしたのでは？

マリアンヌ　最初の実演会で “ あら、ファービーったら、センス良くなったわね ” と思ったのですが、よくよく音を聴いてみるとそういう訳ではなく。ベースとのアンサンブルによって、ドラムの弱点が補完されるような、そういう一種のマジックを感じることはあります
前のベーシスト （ 秘書 ） はスピード感よりも、後ろめにややタメた感じのノリの人だったので、ドラムのモタっている感じとそれなりにマッチングはしていたんですが、スピード感に欠けるところがありました。でも今は同じ ＢＰＭ でも疾走感が違うんです。歌っているとよくわかるの

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ナタリー　特集記事 （ ２０１３年４月２４日 ）

──　’７０年代後半のパンクというのも意外でしたけど、速射砲のような早口もキノコとしては珍しいですよね。

マリアンヌ　私のアイデアでオリジナルよりさらにアップテンポにしてみたら、まあ歌えないこと （ 笑 ） 　まずいと思ったわ。最悪ゆっくり歌ってミックス段階で回転を上げればいいかと思ったんだけど。

──　のちのち実演会でやることを考えたら、そうもいかないですよね （ 笑 ）

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この半年の実演会を聴いて、何なんだこれは！？　と一番驚かされたのが、『 マリアンヌの逆襲 』 の収録曲の中でも出色の出来であるアーント　サリー の「 すべて売り物 」。マリアンヌ支配人が物凄い早口のヴォーカルを披露し、ほとんど何を言っているのかわからないまま、スピードに乗ったジュリ島のベースがぐいぐいと引っ張り、突貫工事のように一気呵成に押し切ってしまうとんでもないカヴァー曲である。
原曲は全くやる気の感じられない Ｐｈｅｗ の投げやりな　♪　すべて売り物～　すべて売り物～ ♪　というヴォーカルがいつまでも耳に残る、ある意味コミカルですらある作品だが、そのテイストが毒性の高い歌詞のシニカルさやナンセンスな言葉遊びをうまくオブラートに包んでいる。
キノコホテルのカヴァーはテクニカルにスピード　アップしただけで、基本的なアレンジはほとんど同じなのだが、この猛烈な疾走感が、この曲からコミカル　テイストを取り除いてしまう企てを成功させている。そして、これこそマリアンヌ支配人が、新生キノコホテルに求めているものなのかもしれない。
この楽曲をエマニュエル秘書がいた頃のキノコホテルがカヴァーしたとすると、おそらく原曲とほとんど同じイメージのやはりコミカルな仕上がりになったと思う。その意味で、マリアンヌ支配人のアイディアをエマニュエル秘書のベースで実現するのは難しかったと思える。

キノコホテル 『マリアンヌの逆襲』 / ノイジー・ベイビー （ Ｍｕｓｉｃ　Ｖｉｄｅｏ　Ｓｈｏｒｔ　Ｖｅｒ．）

ＪＵＮＧＬＥ★ＬＩＦＥ　（ ＶＯＬ.１８５　２０１３年５月１日 ）

──　「ノイジー・ベイビー 」 は、カルメン・マキさんが ＣＢＳ / ソニー時代に発表したシングルの中で最も売れなかったという…

マリアンヌ　当時は全然売れなかったみたいですけど、なかなか沁みる曲なんです。だからこの機会にみなさんに知ってもらいたいと思って収録したというのはあります。これは過去に何度もステージでやっていて、お客さんからも評判の良い曲です。たまに　オリジナル？　って訊かれるんですけど、私こんな曲書けない ( 笑 ) 　クニさん ( 作曲者のクニ河内 ) の才能をつくづく感じる曲です

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この曲などは、エマニュエル秘書版とジュリ島版を聴き比べてみたい強い欲求にかられる一曲である。実際、いわし亭などは、エマニュエル秘書版を何度かライヴで聴いており、いつ録音するのだろうと思っていたくらいなのだ。

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【第１回】 メジャーへの関門

【第２回】 現在に至るめまぐるしいメンバー　チェンジ（２０１３/２/１ 改訂）

【第３回】 キノコ再生～最強メンバー　集結

【外伝】エマニュエル小湊 秘書～キノコホテル退職直前実演会
　　　　 ２０１２年１２月６日　サロン・ド・キノコ～四次元の美学・名古屋編　クラブクアトロ　にて

【第４回】 リズムセクション　電気ベース担当：エマニュエル小湊 ＆ ドラムス担当：ファビエンヌ猪苗代

【特報】新従業員　ジュリエッタ霧島　颯爽登場！（１）（２）（３）（４）
　　　２０１３年２月９日　サロン・ド・キノコ～河原町炎上・第一夜　京都磔磔　
　　　２０１３年２月１６日　ＦＵＺＺ！　ｐｒｅｓｅｎｔｓ　キノコホテル実演会　高松ｓｗａｇｇ
　　　２０１３年５月２４日　サロン・ド・キノコ～淫力魔女の生贄・神戸編　太陽と虎
　　　２０１３年５月２５日　サロン・ド・キノコ～淫力魔女の生贄・大阪梅田編　Ｓｈａｎｇｒｉ－Ｌａ
　　　２０１３年８月１９日　サロン・ド・キノコ　　神戸　太陽と虎

【緊急レポート】その時なにが起こったの？　風雲急！　マリアンヌ支配人、倒れる